10日で覚えるネットワークDay 1: ネットワークの基礎とOSIモデル

Day 1: ネットワークの基礎とOSIモデル

今日学ぶこと

  • コンピュータネットワークとは何か
  • ネットワークの種類(PAN、LAN、MAN、WAN)
  • OSI参照モデルの7つの層
  • データのカプセル化とPDU
  • TCP/IPモデルとOSIモデルの比較

コンピュータネットワークとは何か

コンピュータネットワークとは、2台以上のコンピュータが通信媒体を介して接続され、データやリソースを共有できる仕組みです。私たちが日常的に使うインターネット、社内メール、ファイル共有などはすべてネットワーク技術の上に成り立っています。

ネットワークの基本的な構成要素は以下の通りです。

構成要素 説明
ノード ネットワークに接続されたデバイス PC、サーバー、ルーター
メディア データが伝送される媒体 LANケーブル、光ファイバー、無線電波
プロトコル 通信のルール・手順 TCP/IP、HTTP、DNS
サービス ネットワークが提供する機能 ファイル共有、メール、Web
flowchart LR
    subgraph Network["コンピュータネットワーク"]
        A["PC A"] <-->|"LANケーブル"| S["スイッチ"]
        B["PC B"] <-->|"LANケーブル"| S
        S <-->|"光ファイバー"| R["ルーター"]
        R <-->|"インターネット"| Cloud["クラウド"]
    end
    style Network fill:#3b82f6,color:#fff
    style Cloud fill:#8b5cf6,color:#fff

ネットワークの種類

ネットワークはその規模によって分類されます。

PAN(Personal Area Network)

PANは、個人の身の回りのデバイスを接続するネットワークです。通信範囲は数メートル程度で、BluetoothやUSBなどが使われます。

  • スマートフォンとワイヤレスイヤホンの接続
  • PCとマウス・キーボードのBluetooth接続

LAN(Local Area Network)

LANは、建物内やオフィスフロアなど、限られたエリア内のネットワークです。高速で低遅延な通信が特徴です。

  • 企業のオフィスネットワーク
  • 家庭内のWi-Fiネットワーク
  • 学校のコンピュータ教室

MAN(Metropolitan Area Network)

MANは、都市規模のネットワークです。複数のLANを接続して構成されます。

  • ケーブルテレビネットワーク
  • 大学のキャンパスネットワーク(複数棟を接続)

WAN(Wide Area Network)

WANは、広範囲(国家間・大陸間)に及ぶネットワークです。インターネットは世界最大のWANです。

  • インターネット
  • 企業の拠点間ネットワーク
flowchart TB
    subgraph Scale["ネットワークの規模"]
        direction LR
        PAN["PAN\n数メートル"]
        LAN["LAN\n建物内"]
        MAN["MAN\n都市規模"]
        WAN["WAN\n国・大陸"]
    end
    PAN --> LAN --> MAN --> WAN
    style PAN fill:#22c55e,color:#fff
    style LAN fill:#3b82f6,color:#fff
    style MAN fill:#8b5cf6,color:#fff
    style WAN fill:#ef4444,color:#fff
    style Scale fill:#1e293b,color:#fff
種類 範囲 速度
PAN ~数メートル 低〜中 Bluetooth、USB
LAN ~建物内 高速(1Gbps〜) Ethernet、Wi-Fi
MAN ~都市 中〜高速 ケーブルTV
WAN 国〜大陸 低〜高速 インターネット

OSI参照モデル

OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルは、国際標準化機構(ISO)が策定したネットワーク通信の概念モデルです。通信機能を7つの層(レイヤー)に分割して整理しています。

このモデルがあることで、異なるベンダーの機器やソフトウェアが相互に通信できるようになりました。

flowchart TB
    subgraph OSI["OSI参照モデル"]
        L7["第7層:アプリケーション層"]
        L6["第6層:プレゼンテーション層"]
        L5["第5層:セッション層"]
        L4["第4層:トランスポート層"]
        L3["第3層:ネットワーク層"]
        L2["第2層:データリンク層"]
        L1["第1層:物理層"]
    end
    L7 --> L6 --> L5 --> L4 --> L3 --> L2 --> L1
    style L7 fill:#ef4444,color:#fff
    style L6 fill:#f59e0b,color:#fff
    style L5 fill:#f59e0b,color:#fff
    style L4 fill:#8b5cf6,color:#fff
    style L3 fill:#3b82f6,color:#fff
    style L2 fill:#22c55e,color:#fff
    style L1 fill:#22c55e,color:#fff
    style OSI fill:#1e293b,color:#fff

第1層:物理層(Physical Layer)

物理層は、ビット列を電気信号、光信号、電波などの物理的な信号に変換して伝送する層です。

  • 役割: 0と1のビット列を物理的な信号に変換
  • 関連機器: ケーブル、リピーター、ハブ
  • プロトコル/規格: Ethernet(物理仕様)、USB、Bluetooth(物理仕様)
  • : LANケーブル内を流れる電気信号

第2層:データリンク層(Data Link Layer)

データリンク層は、同一ネットワーク内の隣接ノード間でのフレーム伝送を担当します。エラー検出やMACアドレスによるアドレッシングを行います。

  • 役割: フレームの生成、MACアドレスによる機器識別、エラー検出
  • 関連機器: スイッチ、ブリッジ
  • プロトコル: Ethernet(MAC)、PPP、ARP
  • : スイッチがMACアドレスを見てフレームを適切なポートに転送

第3層:ネットワーク層(Network Layer)

ネットワーク層は、異なるネットワーク間でのパケット転送(ルーティング)を担当します。IPアドレスによる論理的なアドレッシングを行います。

  • 役割: ルーティング、IPアドレスによる論理アドレッシング
  • 関連機器: ルーター、L3スイッチ
  • プロトコル: IP、ICMP、OSPF、BGP
  • : ルーターがIPアドレスを見て最適な経路にパケットを転送

第4層:トランスポート層(Transport Layer)

トランスポート層は、エンドツーエンドの信頼性のある通信を保証します。ポート番号でアプリケーションを識別します。

  • 役割: 信頼性のあるデータ転送、フロー制御、ポート番号管理
  • 関連機器: ファイアウォール(一部)
  • プロトコル: TCP、UDP
  • : TCPが3ウェイハンドシェイクで接続を確立し、データを確実に届ける

第5層:セッション層(Session Layer)

セッション層は、通信のセッション(開始・維持・終了)を管理します。

  • 役割: セッションの確立、維持、終了
  • プロトコル: NetBIOS、RPC
  • : Webアプリケーションのログインセッション管理

第6層:プレゼンテーション層(Presentation Layer)

プレゼンテーション層は、データの表現形式の変換(エンコーディング、暗号化、圧縮)を担当します。

  • 役割: データの変換、暗号化、圧縮
  • プロトコル: SSL/TLS(暗号化部分)、JPEG、ASCII、UTF-8
  • : HTTPSでのデータ暗号化、画像フォーマットの変換

第7層:アプリケーション層(Application Layer)

アプリケーション層は、ユーザーやアプリケーションに直接サービスを提供する層です。

  • 役割: ユーザーアプリケーションへのネットワークサービス提供
  • プロトコル: HTTP、HTTPS、FTP、SMTP、DNS、SSH
  • : Webブラウザでのページ閲覧、メール送信

データのカプセル化

データが送信者から受信者に届くまで、各層でヘッダー(場合によってはトレーラー)が追加されます。この過程を**カプセル化(Encapsulation)と呼びます。各層のデータ単位をPDU(Protocol Data Unit)**と呼びます。

flowchart TB
    subgraph Encapsulation["カプセル化の流れ"]
        D["データ\n(アプリケーション層)"]
        Seg["セグメント/データグラム\n(トランスポート層)"]
        Pkt["パケット\n(ネットワーク層)"]
        Frm["フレーム\n(データリンク層)"]
        Bit["ビット\n(物理層)"]
    end
    D -->|"TCPヘッダ追加"| Seg
    Seg -->|"IPヘッダ追加"| Pkt
    Pkt -->|"MACヘッダ+トレーラー追加"| Frm
    Frm -->|"電気信号に変換"| Bit
    style D fill:#ef4444,color:#fff
    style Seg fill:#8b5cf6,color:#fff
    style Pkt fill:#3b82f6,color:#fff
    style Frm fill:#22c55e,color:#fff
    style Bit fill:#f59e0b,color:#fff
    style Encapsulation fill:#1e293b,color:#fff
OSI層 PDU名 追加される情報
アプリケーション層 データ アプリケーション固有のヘッダ
トランスポート層 セグメント(TCP)/ データグラム(UDP) ポート番号、シーケンス番号
ネットワーク層 パケット 送信元/宛先IPアドレス
データリンク層 フレーム 送信元/宛先MACアドレス、FCS
物理層 ビット 電気信号/光信号/電波

受信側では、逆の手順で各層のヘッダーを取り除いていきます。これを**非カプセル化(Decapsulation)**と呼びます。


TCP/IPモデルとの比較

実際のインターネットで使われているのは、OSIモデルではなくTCP/IPモデル(4層モデル)です。OSIモデルは概念的な参照モデルとして、TCP/IPモデルは実装モデルとして使い分けられます。

flowchart TB
    subgraph TCPIP["TCP/IPモデル"]
        T4["アプリケーション層"]
        T3["トランスポート層"]
        T2["インターネット層"]
        T1["ネットワークアクセス層"]
    end
    subgraph OSI["OSI参照モデル"]
        O7["アプリケーション層"]
        O6["プレゼンテーション層"]
        O5["セッション層"]
        O4["トランスポート層"]
        O3["ネットワーク層"]
        O2["データリンク層"]
        O1["物理層"]
    end
    T4 -.- O7
    T4 -.- O6
    T4 -.- O5
    T3 -.- O4
    T2 -.- O3
    T1 -.- O2
    T1 -.- O1
    style TCPIP fill:#3b82f6,color:#fff
    style OSI fill:#8b5cf6,color:#fff
TCP/IPモデル OSIモデル 主なプロトコル
アプリケーション層 第5〜7層 HTTP、DNS、SMTP、FTP
トランスポート層 第4層 TCP、UDP
インターネット層 第3層 IP、ICMP、ARP
ネットワークアクセス層 第1〜2層 Ethernet、Wi-Fi

なぜ2つのモデルがあるのか

  • OSIモデルは教育・設計に適した理論的モデル。層が細かく分かれているため、各機能の役割が明確
  • TCP/IPモデルは実際のインターネットプロトコルに基づく実装モデル。シンプルで実用的

現場ではTCP/IPモデルが使われますが、ネットワークの概念を学ぶ際にはOSIモデルの7層で理解することが重要です。


まとめ

本日の学習内容

トピック ポイント
コンピュータネットワーク デバイス間でデータやリソースを共有する仕組み
ネットワークの種類 PAN → LAN → MAN → WAN の順に規模が拡大
OSI参照モデル 7層に分割された通信の概念モデル
カプセル化 各層でヘッダーを追加してデータを包む仕組み
TCP/IPモデル 4層の実装モデル。実際のインターネットで使用

キーポイント

  1. OSIモデルは下から上へ: 物理層 → データリンク層 → ネットワーク層 → トランスポート層 → セッション層 → プレゼンテーション層 → アプリケーション層
  2. 各層のPDUを覚える: ビット → フレーム → パケット → セグメント → データ
  3. TCP/IPモデルは4層: OSIの上位3層をアプリケーション層に、下位2層をネットワークアクセス層にまとめている
  4. カプセル化と非カプセル化: 送信時にヘッダーを追加し、受信時に取り除く

練習問題

基礎レベル

  1. OSI参照モデルの7層を下から順に列挙してください。
  2. 以下のデバイスがOSIモデルのどの層で動作するか答えてください。
    • ハブ
    • スイッチ
    • ルーター
  3. PAN、LAN、MAN、WANをそれぞれ一言で説明してください。

中級レベル

  1. 以下のプロトコルがOSIモデルのどの層に属するか答えてください。
    • HTTP
    • TCP
    • IP
    • Ethernet
  2. あなたがWebブラウザでhttps://example.comにアクセスする際、データがカプセル化される過程を各層のPDU名とともに説明してください。
  3. OSIモデルとTCP/IPモデルの違いを3つ挙げてください。

チャレンジレベル

  1. ある社内ネットワークで、PC AがPC Bにファイルを送信します。この通信に関与するOSIモデルの各層の役割を、具体的なプロトコルや技術を挙げて説明してください。
  2. 「OSI参照モデルは理論的には優れているが、実際のネットワークではTCP/IPモデルが使われている」理由を考察してください。
  3. ネットワークエンジニアが障害対応する際、OSIモデルの各層を使ってどのように問題を切り分けるか、具体的なトラブルシューティング手順を提案してください。

参考リンク


次回予告

Day 2: LANとWAN では、Ethernet、MACアドレス、スイッチとハブの違い、VLAN、WAN技術、ネットワークトポロジーなど、LANとWANの具体的な仕組みについて学びます。